今回のテーマは、「界面活性剤を使わない化粧品?」です。
前回、多くの化粧品には界面活性剤が使われていると説明しました。もちろん、やみくもに入れているわけではなく、きちんと目的があって配合しています。
界面活性剤のすごさは、洗濯物の汚れをきれいにするとか、キッチンでお皿のギトギト油汚れをきれいに洗い流すことを、ささっとやってしまうことだと思います。どうしても、キッチンのイメージや洗濯のイメージが強いので、「界面活性剤が化粧品に入っている?!えっ?まさか」 というイメージではないでしょうか?
界面活性剤には様々な分子の構造がありますので、洗濯や洗剤として使う構造と、肌に使うものとは違う構造をしています。同じ点としては、何かにくっついてしまうという性質です。
界面活性剤が泡立つのは、水と空気の境にくっついた状態で、つまり、空気の玉の表面に水のベールをある状態にしています。これを一般的に「泡」と呼んでいます。空気が油汚れ(イラストの茶色部分)になった場合が洗浄で、油(美容オイルなど)になった場合が乳化と呼んでいます。
さて、なんにでもくっついてしまう界面活性剤なので、肌の表面にもくっつきますし、細胞にもくっついてしまいます。健康な人の肌は、しっかりとバリア機能があり、肌にスキがないので肌の中に界面活性剤が入ってしまうことは少ないです。しかし、肌荒れしていたり、傷があったり、敏感肌やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を持っている人にとっては、バリア機能が低下したり崩壊していますので、界面活性剤は簡単に肌の中に入ってきます。健康な人でも傷があったりすると化粧水でもしみたりする経験があると思います。いわゆる肌の弱い人は、いつもそんな経験をしているわけです。
肌の弱い人でも使えるスキンケアとは?そして、どうしたらスキンケアを続けることで健やかな肌に導くことができるのでしょうか?
肌の弱い人でも???
私たちが考えたのは、肌の弱い人やアトピーの人の肌に足りないものを補うことで健やかな肌の状態に近づけることです。このようなスキンケアを繰り返すことで、やがて本当に健やかな肌と同じバリアが構築されると考えています。
では、足りないものは何でしょうか?それはバリア機能です。肌のバリアは数ステップで構築されていて、外からの侵入や中からの逃走を防ぐように出来ています。そのバリアが壊れていたり、無かったりするのが敏感肌やアトピー肌だったりします。なので、私たちは足りないバリアそのものを塗ることを考えました。
いくつかあるバリアの中で、肌の最も外側にあるバリアは、細胞間脂質と皮脂です。皮脂は、皮脂腺から分泌され、非常に薄いベールのように肌を覆っています。その下に角質層(角質細胞が積み重なっている構造)がありますが、角質細胞と角質細胞の隙間を埋めている脂質を細胞間脂質と呼んでいます。細胞間脂質の成分の約50%がセラミド類で占められているため、多くの方が細胞間脂質=セラミドと思われていますが、細胞間脂質がバリア機能を担えるのは、その特殊な構造に起因しています。そのため、セラミドだけを肌に塗っても細胞間脂質にはなりにくいのです。
肌にバリアを作ることを目指し、セラミドを使うものの、限りなくヒトの細胞間脂質に近づけるために、その組成にできる限り近づける研究を続けました。しかし、ご想像通り、細胞間脂質はヒトに近づければ近づけるほど固く、スキンケアとして「塗る」という行為には程遠くなりました。
細胞は、細胞間脂質を作る工程で、肌の最も外側に皮脂と同時に出てきますので、同じ工程を想定し、製造工程を見直し、結果細胞間脂質の組成に近いものを作ることが出来ました。これは肌に塗ることができる剤型になりました。しかも肌の弱い人にとって好ましくないと言われる界面活性剤を含んでいません。これを塗ることで、バリアが補充され、一見してバリア(細胞間脂質と皮脂)が出来たようになります。外部からの細菌などの侵入や内部からの水分の蒸発を防ぎ、肌が守られた状態になるわけです。
化粧品は今まで多くの場合、界面活性剤を使用することが常識でした。私たちは、使えるスキンケアで悩んでいる、探し続けている人たちを助けたい一心で研究をしてきました。界面活性剤を使わずとも商品開発は可能で、使わなくてはいけない呪縛からただ単に離れただけだと思っています。ただ、使いやすさとの両立はむずかしいということがわかりました。
これからも、私たちは「いかに肌が健康で美しくなるか」を念頭に研究を続けていきたいと思います。このような会社があっても良いかなと・・・。