株式会社ナノエッグ社長で、聖マリアンナ医科大学の客員教授の山口葉子です。
私は2000年に聖マリアンナ医大のDDS研究室に着任後、「皮膚から薬を入れる」技術を開発、2006年に開発した技術をベースに起業し、(株)ナノエッグを設立しました。現在は川崎市の殿町に先端医薬・ヘルスケア研究所を、青山に本社を構え、皮膚に関する先端研究を行い、スキンケア化粧品販売やアトピー性皮膚炎の治療薬の研究をしています。
聖マリアンナ医科大学に赴任して以来、医師ばかりの大学内で、物理学者として異端児?女!であった私が、自分なりに学んできた「皮膚」というかなり面白い臓器を、皆様にわかりやすくお伝えしたくブログを書く決意をしました。毎月1話配信して参りますので、是非お付き合いください。きっと、今までの常識が覆ってしまいかもしれません?!そして今回、ヨーコ先生というキャラクターまで作ってしまいました(-_-;)ので、ここからはヨーコ先生が説明していきます。
今回のテーマは、「食物アレルギーは、皮膚が原因だった?!」です。
あれあれ、食物アレルギーは、食べ物が原因。これって当たり前、ですね。
でも最近の研究で、最初に皮膚からアレルゲン(アレルギーの原因になる物質、抗原)が入って、それが引き金となって食物アレルギーになることがわかってきました(日内会誌 102:724~730,2013、Hamada Y. et al. Biosci Biotechnol Biochem. 2001, Shimojo N. et al. Contact Dermatitis. 2017)。腸などの消化器系は、アレルゲンを食べても急激なアレルギーを引き起こさない「経口免疫寛容」、つまり犯人をほどよく見逃してくれるシステムを持っていることもわかってきています。なので、食物アレルギーは、必ずしも食べたからダメなんだではなく、皮膚から入ってしまったためかもしれません。
皆さんは、「洗顔石鹸で重大なアレルギー被害」という事件が記憶に新しいのではないでしょうか?石鹸に配合されていた小麦のタンパク質が原因で小麦のアレルギーを発症してしまった事例でした。
洗顔石鹸で何で小麦のアレルギー??
不思議ですよね。実はこの石鹸には保湿剤として加水分解小麦たんぱく質が配合されていて、洗顔することでより成分が肌の中に入りやすくなっていたこともあって、顔を洗っただけで、食べてもいないのに小麦アレルギーになってしまいました。当時の日本皮膚科学会では多くの検証結果が報告され、原因が突き止められたわけです。患者さんは一生小麦のみならず加工品である醤油(実は小麦が入っているんです)さえも口にすることができなくなってしまった悲しい事件でした。
皆さんが何気なくされているレモンパックやキュウリパック、ビタミンCたっぷりで美肌ケア!と思われていますね。これはとってもこわーーいことなんです。食物は必ずタンパク質が含まれていて、期待のビタミンCだけでなく、タンパク質も肌の中に入ってしまうかもしれません。このたんぱく質は、本来皮膚にはない種類のタンパク質なので、皮膚は「おや、見たことないヤツがいるぞ」となり、やっつけるために免疫機能全開で、全力でやっつけに行きます。その結果アレルギーが発症してしまうわけです。
食べて体にいいものは肌にも良い??
いえいえ、そうではありません。食べ物のタンパク質は胃の中の消化酵素でペプチドやアミノ酸のように小さい物質に分解され、もはやタンパク質としての姿ではありません。そのためアレルギーは発症しづらいですし、消化管は犯人をうまく見逃す機能も持っています。しかし皮膚は消化酵素を持っていませんし、絶対に犯人を見逃さない警察なのです。なので、肌に食べ物でパックをすると、そのままタンパク質が皮膚の中に入った「よそ者」を取り押さえ、二度と入ってこないようにアレルギーを起こします。
皮膚ってすごいんです。決して侵入者を見逃さない。だから、食物アレルギー発症の引き金は、最初に皮膚からアレルゲンが侵入した・・・という考えとなったわけです。
肌に傷があったり、アトピー性皮膚炎で肌のバリアが弱っていたりすると、アレルゲンが入りやすくなっているので気を付けたいですね。アトピーのお寿司屋さんが、魚のアレルギーになってしまうという症例もあったりしますので。
いつまでもおいしいものを好きなだけ食べたいですし・・・。
あっ、でも食べすぎは注意か・・・。
化粧品は多くの方が毎日使う商品です。だからこそ、豊富な知識と正しい認識で、安心して使える商品を開発することが企業の責務と考えています。
次回は、「肌のバリアって何?どうケアするの?」です。引き続き楽しみにして下さい!